東北から始まる、次世代農業モデル

2025.05.20

農業生産法人 NGA株式会社
所在地:宮城県大崎市
作 物:南天(2025年5月現在)
面 積:8.4ヘクタール
導入設備:

気候変動、高齢化、担い手不足。地域課題を乗り越えるNGA株式会社の挑戦

いま、日本の農業は大きな転換期を迎えています。気候の変化によって、作物が育ちにくくなる年が増え、これまでの経験や勘だけでは対応が難しくなってきました。また、長年農業を支えてきた方々の高齢化が進み、地域の農地を守る力が弱まっています。こうした課題に対して、今求められているのは、環境への適応と人手不足の両面に応える、新しい農業のかたちです。

宮城県に拠点を置く農業生産法人「NGA株式会社」では、気候変動への対応と高齢化社会を見据えた新しい農業モデルとして、ソーラーシェアリングを活用した栽培方法を展開しています。

今回は、代表取締役の 鈴木 義宣 様 に、導入の背景や効果、そして今後の展望についてお話を伺いました。

地植えでは樹木が枯れる

「東北地方では、農地の多くがもともと田んぼだった土地で、実に約7割が水田由来とされています。そのため、地植えでは排水性が悪く、果樹などの樹木系作物がうまく育たないことが多いんです」と鈴木 様。

こうした土地条件を克服するため、鈴木 様 はルートプラスポット(大型植木鉢)を活用した栽培方法を導入。あわせて、灌水設備や水タンクも設置し、安定した水管理と効率的な作業環境を整えています。

この取り組みの背景には、単なる栽培技術の工夫だけではなく、地域農業が抱える複合的な課題への対応という狙いがあります。たとえば、ソーラーシェアリングによる太陽光パネルの設置によって、農地に適度な遮光環境が生まれ、直射日光を嫌う農作物の育成に適した条件が整います。また、ポット栽培による高い作業性と省力化により、高齢者でも腰をかがめずに作業ができるようになり、担い手不足や高齢化への対策としても有効です。

ソーラーシェアリングをしながらルートプラスポットで栽培

アグリ開発で導入を決めた理由

特に、山間部所や、小規模で農業を営む個人農家にとっては、専門的な設備の導入に際して、どこまでサポートが受けられるかが重要な判断材料になります。水の供給経路の確保や地形に応じた設備設計など、現場ごとの課題に柔軟に対応できるパートナーの存在は、導入のハードルを大きく下げる要因となります。

アグリ開発 宮園

導入の効果

「路地植えをやめたことで、苗木が根付かずに枯れてしまうロスがぐんと減りました。それに、ポット栽培に切り替えたことで、腰を曲げずに作業できるようになり、身体への負担が軽くなった分、作業効率も上がっています」と鈴木様は語ります。

また、現在は 設置した水タンクに1年間でたまる雨水の量だけで、灌水がまかなえるかどうかを検証している段階にあり、持続可能な栽培モデルとしての可能性を探っている最中です。

自然の恵みを活かしながら、無理のない運用体制をつくる――そんな鈴木 様 の挑戦が、次の地域農業のヒントになるかもしれません。

今後の展望

NGA 鈴木 様

昨年からの出水制限に続き、今年も深刻な水不足に直面している東北地方。農業用水の確保が難しい中で、効率的な水利用を可能にする灌水設備の重要性が高まっています。

「東北の気候は今後さらに大きく変わる。だからこそ、変化に強い農業を根付かせたい」と鈴木 様。NGA様が目指すのは、規模拡大ではなく、未来を見据えた持続可能な農業の実現です。

その取り組みは、地域の農業委員会からも注目を集めており、水資源を有効活用した環境変動に強い農業モデルとして期待が高まっています。

全国の農家の皆さんへ

「気候変動に負けず、日々くじけず、全国の農家さんと一緒に農業を盛り上げていきたいですね」
宮城県のNGAのみなさま

鈴木 様 は全国の同業者に向けた温かいエールを送ってくださいました!

鈴木 様 の言葉には、これからの農業を前向きに支え合っていこうという強い想いが込められていました。
アグリ開発は、そんな現場の声に寄り添いながら これからも全国の農家の皆さまと共に、持続可能で安心できる 農業のかたち をつくっていきます。